ひとこまの向こう側にて。

ひとこま絵日記を描いているアシダのブログ

睡魔と空腹と、息を止めて過ごした夜

とある案件で、25カットのイラストを描くことになった。
提出は翌日のPM1時。

下書きはお客さんからだいたいOKをもらえていて、これからペンタブ使ってフォトショのブラシでひたすら清書していく作業となる。

これはもう、今日は徹夜だと覚悟した。
そもそも「これ、自分に納品できるだろうか」と、受注する時から不安があった。やってみたいという衝動の方が大きかったし、いざとなったら徹夜して何が何でも納品するって覚悟を決めればいいと思ってたけど、でもまさか本当にその状況になるだなんて。

今から作業を始めたとしても、1カットに1時間もかけてられない。
とにかく時間が無いので綺麗な線を一発で描くために息を止めることにした。吸って吐いての振動がペン先に伝わって線がブレないように、1本線が描き終わるまで呼吸を止めるという作業を何度も繰り返す。

それでも、描いても描いても終わらない、まだまだある。少しでも気を緩めると、人物の顔つきや髪の分け目、服の形が乱れてくるので油断できない。

あるのは睡魔と空腹と、絶対やりきるという覚悟だけ

眠さのピークはAM3時頃。お腹はすくけど、お腹いっぱいになれば眠くなるから絶対に何も食べないと決めていた。コーヒーか生姜湯をひたすら飲んで睡魔と空腹を紛らわせる。

進めたら、終わる。描けば、終わる。

そうポソポソ言いながらペン先と画面にとにかく集中し、絶対やりきるという覚悟で25カットをひたすら描き続ける。

もしかしたらこの仕事、のちにすんごいことになるかもしれない
この仕事がきっかけで、私の未来に何かビックリするようなことが起こるかもしれない
みんな喜んでほしいなぁ
お腹すいた、これ描き終えたらはじめに何食べようかな
あかん、右腕筋肉痛なってきた

ポソポソひとり言を言い続け、何がなんでも描き続けて終わらせるしかないと腹をくくる。
ひと晩で自分も信じがたいくらいのパワーを出した。

隣の部屋の人がベランダの戸を開ける音がガタガタ聞こえ始めた。
もう朝の9時、ようやくラストの1カットを書き終えたところ。
眠いはずなのに若干興奮気味で目が冴えていた。

ついに終わった。

本当に25カット描けた。

眠いのか嬉しいのかよく分からない。今はもう、お腹が空いてるというより飢餓状態に近いかもしれない。フラついてこけそうになるのを必死にバランス取りながら近所のスーパーへ行き、たまごサンドとカツサンドを1パックずつ買って帰った。

あったかいコーヒーを入れて食べる。
最高においしかった。

42時間ぶりの眠り

当然、徹夜明けと言えどもこの日も提出したイラストのフィードバック対応が止まらない。
他の案件も締め切り日だったので仮眠を取ることもなく作業が続くけど、不思議と眠くなることはなかった。
そして夜の8時くらいには仕事が落ち着きはじめ、お風呂に入ってなかったことを思い出してシャワーを浴びる。その日は42時間ぶりにベットに横になった。

試しに目覚ましをセットせずに寝てみたら12時間死んだようにぶっ通しで眠り込んでしまって、目が覚めたらアポに行く1時間前だったので慌てて準備する。

ひとまず正念場を乗り切った今、少し落ち着いてめちゃくちゃ清々しい気分です。
ここ3日間は「掃除しなくていいよ、ご飯も作らなくていいよ!イラストに集中して!」と自分を甘やかしてきたので、徹夜明けの部屋は凄まじく散らかっていた。

「いいですね!」を「すごくいいですね!」にしてくれた

そして、フィードバック対応が済んでイラストをエンドクライアントに納品してから3日後、担当のクリエイティブディレクターさんから連絡。 お客さんにもイラストを気に入っていただけて大変好評だったという吉報だった。

この瞬間に、すべてが報われた。

徹夜による睡眠不足も疲労も、イラスト描きすぎと運動しなさすぎによる上腕二頭筋の筋肉痛も、無呼吸状態を繰り返してペン先に全神経注いだ時間も、すべて報われる。

クリエイティブディレクターさんのアドバイスが的確で、それを取り入れるとイラストがグングン良くなってくのが描いてて分かった。きっと、お客さんの「いいですね!」を「すごくいいですね!」にしてくれたんだと思う。
私ひとりじゃ、そこまで精度をあげることはできなかった。

ひとつ、またひとつと、いろんな締め切りから解放され、その都度自分が剥けた感がする。
それはもう、快感としか言いようがない。

たまごサンドとカツサンド、また思い出の味が2つ増えました。

関連記事