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ひとこま絵日記を描いているアシダのブログ

沖縄離島ひとり旅 scene5 〜旅人達の距離感〜

【3日目:波照間→黒島】

今日から波照間島から黒島へ移動する。黒島に行くためには一旦石垣島に戻らなければならない。午前10:00過ぎに波照間港まで宿の送迎車で送ってもらう。ちょうど昨日から宿泊していた1人の男性も石垣島へ行くらしく、その人と一緒に送迎車に乗せてもらうことになった。

大野くんと杉山くん

その男性は波照間の幻のお酒を手に入れたのだと移動中の車内で宿の主と話していた。
この男性、誰かに似ている気がする。誰だろうか、ピンとくる人がすぐに思いつかないのだが、強いて言うなれば 「ちびまる子ちゃん」に出てくる、まる子のクラスメイトの大野くんと杉山くんを足して2で割ったようなかんじた。
見た目の雰囲気は絶対に大野くんだ。でも沖縄滞在で日焼けしているせいか杉山くんのように肌が黒いのである。なのでどちらか片方とは言い切れないのだ。
実際の名前が分からないので、このブログではこの男性のことを「大野」と「杉山」を掛け合わせて「大山くん」と書かせていただきたい。

旅人同士の良い距離感

大山くんは東京から来ているらしい。年齢は直接聞いていないので不明だが、20代後半から30代中頃といったところだろうか。

波照間港に着き、大山くんと私は宿の主に別れの挨拶をした後、既に到着していた石垣島行きの船に乗り込んだ。波照間行きの往路で乗った脱北船のような船とは違って、とても大きくて綺麗な船だった。

私達は「せっかくなんで隣の席で座りますか?」というように、どちらかが言い出す訳でもなく同じ列に座った。
こういうのが旅の良いところ。私達は同じ宿に泊まっていた1人旅同士のよしみだ。色々旅の話を聞きたいし話もしたいじゃないか。4席ならぶ1列シートで、大山くんは私に窓側の席を譲ってくれた。大山くんは私から2席分空けた通路側の端に腰を下ろす。
こういう距離感の取り方もちょうどいい。喋りたければ喋り、眠りたかったら勝手に眠る。音楽を聴きたくなったら気にせずイヤホンを耳に入れる。2席も空いていればお互い相手に気を使うことなくそれができてしまう。

玄人と素人の会話

大山くんは沖縄の八重山エリアには1年に2回ペースで来ており、今回の滞在期間は5日で明日東京へ帰るんだとか。
「たった5日で、そんなにも日焼けするもんなんですか?」と私が聞くと、「全く日焼け止めを塗らなかったらこうなりますよ?」と綺麗な関東弁が爽やかに返ってきた。沖縄の日差しは実に恐ろしい。今すぐ日焼け止めクリームを自分の肌に塗りたくりたい気分だ。

あの島のこの宿がオススメだとか、あの島のこの景色が良かったなど、沖縄離島の旅リピーターである大山くんは色々教えてくれた。私が後日竹富島で宿泊する予定の宿は大変人気らしく、私が2週間くらい前に2泊の予約が取れたことを伝えると「それはすごい!あの宿、今の時期だと普通は2週間前で2泊も取れないですよ、ラッキーでしたね!」と言う。
沖縄旅行を企画するときは、だいたい2ヶ月前くらいから宿や飛行機を抑えていくのが主流らしいが、私は宿を抑えたのは2週間前、飛行機は3週間前だった。

私が1週間この八重山エリアに滞在することを知った大山くんは、そんなにも会社の休みが取れるなんて羨ましいと言う。実は7月末で退職したのだと伝えると、「そういう人ほんと多いですよね!」と、私と同じような人と出会ったことを思い出したかのように大山くんは笑った。

どこかで会話が自然に終わったので、大山くんはパンか何かを食べ始め、私は窓の外から見える海を眺めた。ピチピチ飛び跳ねるトビウオを狙った鳥達が、見事にクチバシで捉えては飛んでいく。そしてまたやって来る。その鳥はクチバシが黄色でペンギンがスマートになったようなフォルムの鳥だった。
それをずっと眺めていると、いつの間にか大山くんは眠っていた。私は耳にイヤホンを突っ込み、SpotifyでTHE BOOMの「島唄」を連続再生しながら今日見た波照間の景色を思い出していた。

島唄という音楽は、聞けば聞くほどに沖縄の風土とマッチしている。晴天ばかりではなく、嵐も突然やって来る。島に来る人もいれば、当然去っていく人もいる。涙を流す夜もある。沖縄滞在中はずっと聴いていられそうだ。

君の名は

石垣港に着いた。私はこれからすぐに船に乗って黒島へ向かわなければならず、ここで大山くんと別れることになった。「インスタやってますか?」と聞かれたので、互いにアカウントを教えあった。最近の離島滞在中の出来事をタイムリーにアップしているので、あまり変なことを投稿してなくて良かったと安心する。と言っても、大半がオリオンビールかスパムの写真なのだが。

私は石垣行きの乗船券を買いにチケットカウンターへ向かい、大山くんに手を振った。
結局最後まで本名は分からなかった。
またいつかこの八重山の地で再開する日が来るもしれない。その時、私は恐らく彼のことを大山くんと呼ぶだろう。

 

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